最新ショーガーデン事例・横浜「ばらフェスタ2019」

かたくり工房ではショーガーデンも多く手がけています。最新のショーガーデンは横浜大さん橋ホールで開催された「ばらフェスタ2019」。NHKの人気番組「趣味の園芸」を制作するNHKエデュケーショナルが、2019年に初めて開催するバラを主役とした展示イベントです。かたくり工房ではメインガーデンとテーマガーデンなどを制作しました。

新しいバラのイベント横浜「ばらフェスタ」

横浜市は山下公園や港の見える丘公園、アメリカ山公園、日本大通り、横浜イングリッシュガーデン、八景島バラ園など、市内各所にバラが咲き誇る日本有数の「バラの街」です。バラは「横浜市の花」でもあり、2019年からはこうした市内の多彩なバラの名所をつなぎ、花であふれる横浜を楽しんでもらう「横浜ローズウィーク」がスタートしました。「ばらフェスタ」は、この「横浜ローズウィーク」のメインイベントとして横浜大さん橋ホールを舞台にショーガーデン形式で初開催。歴史や物語、暮らしなどさまざまな観点からバラの魅力に迫り、横浜のバラ文化に新たな1ページが加わりました。

最新品種が勢ぞろいした「ウェルカムローズガーデン」

この庭はお客様を迎えるウェルカムガーデンです。バラにはすでに何万と言われる品種がありますが、毎年、世界中のバラのナーセリーや育種家たちの手によって新品種が生まれ、その数は増え続けています。この庭ではそんな最新品種のバラを中心に庭を構成し、一周ぐるっと見てまわると今のバラトレンドがわかるようになっています。バラだけでなく、樹木や草花も入れ庭として美しいビジュアルを完成させることはもちろんですが、バラの大きな魅力は「香り」。その香りは決して一つではなく、品種によって濃厚な甘さのある香りや柑橘のような爽やかな香り、スパイシーでエキゾチックな香り、ふわっとしたパウダーの香りなど本当に豊かなバリエーションがあります。そんなさまざまなバラの香りをお客様に堪能していただくために、香りの強いバラは通路側に配しました。

土の地面がない屋内空間に、華やかなガーデンを出現させるには様々な苦労がありますが、最も重要かつ大変だと思うのは素材の準備です。ショーガーデンの庭を構成するためには、すでにある程度大きく育ったバラや草花が必要です。それも会期中に最も美しい花を咲かせなければならないため、何ヶ月も前から開花調整をします。その準備は各ナーセリーにお願いしますが、不安定な気候変化のなかで花を最高の状態にコントロールしてくださるナーセリーの方々の力には、いつも感嘆と感謝の念しかありません。今回も「大森プランツ」、「河本バラ園」、「京成バラ園芸」、「花ごころ」、「バラの家」、「コマツガーデン」「高松商事」「クレマコーポレーション」など各社がこの日のために素晴らしく美しい花を届けてくださいました。

「妖精たちが棲む フェアリーガーデン」

私は『花の妖精』という本が昔から大好き。草花が好きな方の中には、この本のファンが多いのではないでしょうか。“花の妖精”はイギリスの挿絵画家、シシリー・メアリー・バーカーが描いた絵本で、花の衣装をまとった子どもたちが妖精として庭のなかで生き生きと活躍する様子が描かれています。イギリスではガーデンには妖精が棲んでいると言い伝えられており、たくさんの逸話があります。今回はその妖精をテーマに、「妖精たちが棲む フェアリガーデン」も制作しました。シシリーが描いた数々の草花の中から、バラと調和する9種の草花を選んで庭に入れました。舞台裏も少しお見せしながら庭をご紹介します。

 

バラは誰もが認める花の中の女王ですが、『花の妖精』のなかにはヒナギクやキランソウなど、小さく素朴な草花もたくさん登場します。主役を引き立てながら、庭に和やかで優しい雰囲気を生み出してくれるそんな草花が私は大好きです。ですからこのガーデンでは普段、私たちがよく庭づくりで使っている脇役の草花もたっぷり入れています。なかでもおすすめなのは、リシマキア・ヌムラリア‘オーレア’。地面を覆うように這って育つグラウンドカバープランツで、妖精の彫像の足元に植え込みました。輝くようなライムゴールドの葉が、サークル花壇を一段と明るく浮かび上がらせてくれています。秋以降、葉は寒さに当たるとキャラメル色に紅葉し、一年中庭を彩ってくれて雑草除けにもなるので、とても重宝する素材です。会期中に開催された講演会でも、バラをより美しく見せてくれる植物として、リシマキア・ヌムラリア‘オーレア’を紹介しました。

ショーガーデンは期間限定の庭ですが、こうしたイベントを通して多くの人に庭の魅力を伝え、緑のある豊かな暮らしをおくる人が増えてくれたら、作り手としてこんなにうれしいことはありません。