個人邸施工例「古民家の建物に調和させた庭リフォーム」

かたくり工房の設計した全国のガーデンをご紹介します。今回ご紹介するのは、古民家の家に合わせた個人邸の庭リフォームの実例。住宅街で隣家に囲まれた場所では、視界に入れたくないものを隠し、どこから見ても美しい風景となるようデザインするのがポイントです。

Before

施工前の状態では、植栽帯は一部に設けられているものの、それ以外の地面は砂利の混じった土がむき出しの状態でした。写真右側の建物は施主さまのお宅の蔵ですが、向こう側の木の壁の家は隣家。写真左側にも撮影地点側にも隣家があり、3方を隣家に囲まれた住宅街の庭です。施主さまは寄せ植え教室を開いているほど植物を育てるのがお上手な方ですが、風景を作るには植物だけでなく構造物などが必要です。特に住宅街の庭では、お隣の家のゴミ置き場や室外機など、視界に入れたくないものが見えがちなので、フェンスなどの構造物が必要になります。

After

こちらが施工後の写真です。一見、同じ場所とは分からないくらい風景が異なりますが、同じ地点から同じ場所を写した写真です。右側の蔵は庭が綺麗になったため、その風景に調和するようにと、庭の施工後にリフォームされました。ご自宅が古民家風の建物で、この蔵もあったため、建物の雰囲気に合わせて石と砂利でペイビングを施しました。土が露呈していると雑草取りや雨天の後に乾きにくく歩くのにも苦労するので、まずは地面を整えることが大切です。

機能性と景観を両立するペイビング(地面の意匠)

ペイビングとは、タイル張りや砂利敷きなどで美しくデザインする地面のことで、庭作りにおいてとても重要です。というのも、実は庭の面積の中で、植栽帯と同じか、より広い面積を占めているのが、植物が植えられていない地面だからです。もしも、ペイビングを施さずに地面を植物で埋め尽くそうとしたら、専属ガーデナーが必要なくらい庭の手入れは大変になりますし、手入れのほとんどの時間を草取りに費やすことになります。

大事なのはペイビングと植栽量のバランス。ペイビングの部分が多すぎるとイカツく人工的な感じになってしまいますし、植栽帯が多ければ先ほど言ったように庭の手入れは大変になります。この庭ではさまざまな大きさの四角い敷石と野面石(のづらいし)、砂利を組み合わせ、園路としての実用性と景観を兼ね備えたペイビングとしました。砂利の中にもところどころに植栽を設け、緑が小島のように浮かぶようにし、みずみずしさをプラスしました。

この庭では面積的に見ればペイビングの方が広く、花壇の方が小さいのですが、緑の量は十分たっぷりに見えます。それは花壇のデザインや植物のセレクト、配置によって「見え方」をいかようにも変えられるからです。要はそれがデザイン効果なわけですが、施主さまの状況に応じて維持継続可能な範囲で植栽帯を設け、かつ見た目は美しく、手入れのしやすい形に仕上げることが個人邸のガーデンデザインでは必須です。立水栓が花壇の真ん中にありますが、これも広い庭のメンテナンスを考えれば、庭の端っこでなく真ん中にある方が便利だからです。ただし、庭の景色と調和していなければなりませんので、昔の水道管を利用し、かたくり工房の“大将”こと社長が手作りしました。

植栽の配置で視線をコントロール

この写真は建物側から見た庭景色です。家から庭を眺めた場合、かなり年季の入った隣家の建物が庭の背景となるため、そこにはフェンスを設けました。黒いフェンスを選んだのは、白や明るい色のフェンスだと、かえって背景の家が際立って目立ってしまうためです。隠したいからといって、これみよがしに高い壁を設けてしまうと、ご近所さんとの関係性にも影響してしまいます。ですから、隣家にお住まいの方の感情にも配慮しつつ、目隠しとなるようフェンスの高さや色に配慮し、庭を眺めた時に隣家側へ目がいかないよう手前の植栽によって視線をコントロールします。ここでは縁側にグッと近づけたアオダモの木やペイビングの中に小島のように浮かぶタイムの茂み、フェンス側の花壇がその役目を果たしています。

住宅街の庭づくりでは、施主様の敷地内だけでなく、庭の背景に隣家の勝手口や給湯器、物置きなど視界に入って欲しくないものが、ないことの方がありません。それをどう隠すのかということも、ガーデンデザインの課題です。私はどこにいてもそれらが見えないように、または気にならないようにするために、室内外を動きながら外の景色の何がどのように見えるのか十分に確認し、庭のデザインをします。全体の雰囲気にマッチさせながら、構造物や植物を使って見たくないものを上手に隠し、視界をコントロールするのも庭の大事な機能です。

ギャラリーのように鉢植えを楽しむ砂利の庭

こちらは公道側です。建物の外観に合わせて、フェンスの板は縦に張りました。ここも、もともとは土が露呈していましたが、草取りにとても苦労されていたので、フェンス側に植栽帯を少し残し、ほぼ全面砂利敷きとしました。リフォームの際に出てきた石や瓦など、施主様の所にあったものを色々利用して、砂利敷き中に鉢植えが置ける石の台を設けました。施主さまが作った寄せ植えをそこに置いていただき、枯山水の中のギャラリーのように楽しんでもらう趣向です。砂利の面積が広い分、寄せ植えの緑が際立って見えます。

 

ペイビングやフェンスなどは、なかなか個人的に施工できませんが、庭の印象や機能性を決定づけるベース部分です。そして、そうした部分こそ私たちプロの仕事です。庭景色がなんとなく決まらないな、と思っている方にも庭リフォームはおすすめです。