個人邸施工例「和のテイストを残しつつ、草花の彩るガーデンへリフォーム」

かたくり工房の設計した全国のガーデンをご紹介します。今回ご紹介するのは、純和風の庭からハーブや草花が彩るガーデンへのリフォームです。庭の中に居心地のよい場所をいくつか用意して、家族と過ごしたり、1人でくつろいだり、庭をもう一つの暮らし空間として楽しめるようにしました。

Before

先代から引き継いだ農家の広い庭で、元々は松や柘植が植わる純和風の庭でしたが、施主の奥さまに花を育てたいという希望を受けて、庭をリフォームすることになりました。

After

先代が大事にされていた日本庭園のエリアも残しつつ、手入れの難しい大きな松や柘植などは取り払い、庭を設計し直しました。庭のリフォームで大事なことの一つは「調和」です。既存の庭や植物との調和、家屋との調和、街並みとの調和。例えば、伝統的な日本家屋や瓦屋根の家並みのなかに、急に白いフェンスに囲まれた花いっぱいのコテージガーデンが登場するのも、違和感があるものです。ですから、この庭でも庭の背景となる日本家屋やその町並みに調和するように、石や砂利、竹といった和の素材を使いつつ、季節の花の彩りが楽しめるよう植栽を計画しました。

もう一つ、私が庭を設計するうえで大事にしていることは、庭に「人の居場所」を作ることです。庭の広さに関わらず、ちょっと座って庭を眺めながらくつろげるような場所を作ると、暮らしの楽しみは思いのほか広がります。屋外という開放感のあるスペースは、人の気持ちや関係性に少なからぬ良い影響を及ぼします。大事なのは、こうしたテーブルや椅子、ベンチを置く場所を最初から設計図にいれておくということです。庭がすっかりできあがってから、どこにガーデンファニチャーを置こうかしらと考えるのは、合理的ではありません。よく芝生の広場にテーブルと椅子を置いているケースを見かけますが、その場合、家具を置いた場所は日陰になるので、程なく土がむき出しになり、雨が降った後は乾きにくくベチャベチャになり快適度が著しく下がります。また、踏圧でその周辺も芝が傷んで始終張り替えなければならなくなったりします。最初から人の居場所を決めてタイル張りや砂利敷などのペイビングにしておけば、そうした不必要なメンテナンスに煩わされずに済みます。

庭の奥には植栽の影にあえて隠れるように、リクライニングチェアを置いたエリアを設けました。1人でゆっくり過ごしたいときにぴったり場所です。

植物を選ぶときには、もちろん花も大切ですが、ガーデン設計では葉の色や形の違いがとても重要です。花の咲いている期間よりも葉が展開している期間の方がずっと長いので、葉の個性が引き立つような植物を組み合わせると、花のない時期でも庭が美しく見えます。この庭に入れたギボウシやフウチソウ、ティアレア、シマイトススキなどは葉が美しく、和洋を調和させるときにも活躍してくれます。

庭を囲うフェンスは私がデザインし、かたくり工房で製作したオリジナルです。格子と横板を組み合わせ、緑がちょうどよく透けて美しく見えるようにしました。適度に風を通し、目隠しにもなってくれます。

格子のデザインは日本家屋とも調和します。耐久性のためにウリン材という非常に硬質で重たい材料を使っているので、この凝った意匠に仕上げるのに、作り手は大変苦労しましたが、その甲斐あって格式高く品のあるフェンスになりました。

そのフェンスに合わせて門柱もデザインしました。夜になると灯が入り、ふわっとあたたかな印象です。

かたくり工房はオリジナルの制作物も得意としていますが、これもそのひとつです。カラーの花を模したオブジェは、実は水琴窟になっていて、後ろの水鉢に水をためると音が響く仕組みになっています。一定の時間で鳴るので、庭仕事に夢中になっていたりする際には、時を知らせてくれる時計のような役目も果たしてくれます。

こちらは機能性を重視し、2つの蛇口を備えた水場です。高い方は立って使いやすい高さで、低い方は犬の足を洗ったりする際にちょうどいい高さになっています。ちょっとした棚も設け、タオルなどが置けるようにしました。