個人邸施工例「小さな庭事例:スリッパのまま野菜が収穫できるデッキガーデン」

かたくり工房の設計した全国のガーデンをご紹介します。今回ご紹介するのは、室内からスリッパのままキッチンガーデンへ行ける庭です。住宅街のコンパクトな庭で、収納をしっかり設け、庭のある暮らしを楽しめるようにしました。小さなお子さんが遊べる仕掛けもいっぱいです。

Before

庭は軽自動車2台分のスペースで、雑草が膝より高く茂ってしまっていました。施主様のご希望は、車1台分の駐車スペースを確保しつつ、家庭菜園のできる庭。小さなお子さんがいらっしゃるお宅でしたので、家と庭の距離感をできるだけ近づけて、極力庭に手がかからないようにしつつ、お子さんの五感を刺激する仕掛けを考えました。

After

庭の手前を駐車スペースにし、フェンスを挟んで奥をプライベート空間としました。駐車スペースは全体をコンクリートなどで覆ってしまうと、夏の強烈な日差しで50度近くになってしまうことも珍しくありません。芝生やグラウンドカバープランツで地面を覆っておけば、雑草よけとしての効果を発揮しつつ、温度が上がり過ぎるのも防げます。タイヤが通る部分は踏圧で植物が育たないので、そこだけ石張りにしています。公道を挟んだ向かい側は畑で、風が吹くと土埃が舞い上がるため、窓のそばには樹木を植栽しました。写真は植栽直後ですが、葉が茂ってくれば風よけとして機能してくれます。

スリッパのまま収穫できるデッキ一体型菜園

駐車スペースの奥はデッキと芝生、菜園になっています。菜園はレイズドベッドという地面の高さを上げた花壇式になっていて、デッキの高さと菜園の地面レベルがほぼ同じにしてあります。ですから、室内からスリッパのまま菜園へ行って、野菜を収穫してキッチンへ行けます。デッキは弧を描くデザインとすることで、ここに座ると自然と向き合うようになっています。また、ゆったりとしたスペースを確保しつつ、家と庭との一体感も生みます。

隣家とのフェンス際にはリンゴの木とジューンベリーの木を植栽。果樹を3本そのまま育てると枝が広がって、その下の菜園がすっかり影になってしまうので、リンゴの木は「エスパリエ仕立て」にしました。エスパリエ仕立てとは、枝を横に水平に伸ばす果樹の仕立て方の一つで、支柱を立ててワイヤーを張り、そこにリンゴの枝を誘引しています。夏はピーマンやトマト、ナス、キュウリやハーブなど、サラダの材料に困らないほどのさまざまな野菜を育てられます。深さがあるのでジャガイモやダイコンなどの根菜類も育てられます。

省スペースの「デッキinテーブル」

デッキは一部をくりぬいてテーブルとしました。使うときだけ引き上げてテーブルとして使える「デッキin テーブル」です。テーブルとして使えるだけでなく、デッキの下を収納として使うこともできます。写真は、このデッキを制作した弊社代表とスタッフです。テーブルは4人で囲めるくらいの大きさです。

デッキは2段の階段式にし、芝生の庭へ降りやすくしました。また、ステップはここに腰をかけて座れるように、幅を40cmほどとっています。50cmにすればあぐらをかいて座れます。芝生とデッキのきわには白い玉砂利を敷き、雑草が生えてくるのを防ぎます。

 

ドレミが響く「メロディフェンス」

駐車スペースと庭との境には、格子状のオリジナルフェンスを作成しました。じつはこのフェンスは鉄琴になっていて、バチで叩くとメロディーが奏でられる「メロディフェンス」です。小さなお子さんがいるので庭で遊べるといいなと思ったことと、ここに単純に目隠しのフェンスを設けてしまうと、庭に影ができて植物が育たなくなってしまうからです。施主のお子さんはもちろん、その友達もこのメロディフェンスを叩きたくてよく遊びにきてくれるそうです。

中央の白い大きなコンテナは、夜になるとライトがつくライティングコンテナです。ライトが灯ると庭側のデッキは影になり、屋外からの視線を遮ることができます。庭を完全に囲って外から全く見えないフェンスの場合、不審者はフェンスを乗り越え内側に一回入ってしまえば中で何をしていてもわからないので、逆に狙われやすいのです。むしろ、完全に視線を遮断しない方が防犯対策としては有効です。このライティングコンテナを設えたフェンスなら、夜間はライトを灯せば庭の内側は暗く見えるので、プライベート空間を保ちつつ、防犯対策にもなります。

5感を刺激する仕掛け

小さなお子さんがいらっしゃるお宅だったので、庭で遊べるように芝生にしました。さらに、立水栓の周囲を玉砂利でデザインし、砂利のきわはタイムを植栽。玉砂利の上を裸足で歩くと足裏が刺激され、タイムの香りも立ち上ります。植栽は香りや色、手触りの違いが楽しめるハーブやカラーリーフをセレクト。五感への刺激は豊かな感性を養います。

立水栓は庭の端っこに設けられることが多いのですが、使い勝手としては庭の真ん中にあった方が水まきの際にホースをやたらに長く伸ばさなくて済みます。大したことのない作業に思えて、長く伸ばしたホースを巻き戻すのは毎日のこととなると結構面倒なもの。作業は楽に越したことはありません。立水栓はデザインの素敵なものを選べば、庭のフォーカルポイントにもなります。隣家との境の目隠しフェンスを兼ね、立水栓を組み込んだ造作物をオリジナルで作成しました。鳥小屋や道具類の収納箱などもあります。立水栓を挟んで両脇はリンゴのアーチになっています。

おもちゃを収納。庭がすっきり。
おもちゃを収納。庭がすっきり。

施工から数年後、施主様にお話しを伺ったところ、お子さんは学校から帰ってきたら、庭へ直行するのだそうです。そして、夏は真っ先にブルーベリーの木のところに行き、摘み立てのブルーベリーを頬張るのだとか。庭のある暮らしを楽しんでくれている姿が目に浮かび、とても嬉しく思いました。

かたくり工房は、施主様のライフスタイルや庭の条件に合わせ、柔軟な発想で庭デザインからオリジナル造作物までを手がけ、豊かなガーデンライフを叶えます。しばしば、「こんな小さなスペースをお願いしていいのかしら」というお声を聞くことがありますが、庭の広さなどに関わらず、ぜひご相談ください。